2014年02月07日
『―ある信州教育の回想―伊那の勘太郎』が,ついに発刊となりました!
現在,信教出版ホームページでも「書籍」ページのトップで紹介していますので,
仕様等詳しくはそちらをご覧ください。
上の写真は先日,上伊那教育会館で販売をさせていただいたときの様子です。
自分が担当した本を,目の前で手に取ってもらい買ってもらうことは,
そのような機会はそれほど多くないのですが,何度見てもうれしい光景でした。
今回,一番苦労したのはカバーデザインでした。
どのようなデザインにしたらよいか,相当悩みました。
絵にするか写真にするか文字だけでいくか,
絵にするとしたら,写真にするとしたら,どんなものがいいのか。
読者を惹きつけ,どんな話かと想像を膨らませわくわくしてもらえるような,
それでいて本の内容やイメージにふさわしいものとは…。
著者の大槻先生にもご相談していましたが,先生も相当悩まれていたようでした。
およそのイメージについて何回か意見交換をしましたが,最終的には「お任せします」とのお言葉。
正直言って,「任されたぞ」という意気揚々とした気分ではなく,
「任されてしまった。どうしよう」という,
不安とプレッシャーに満ちた数か月間は苦しくもありました。
何かヒントはないかと,書店へ行き単行本や文庫本の表紙を眺めまわし,
長野県にゆかりのある画家さんの絵画展を観にいったりもしましたが,
なかなかよいアイデアが浮かんできませんでした。
そして,このままではカバーデザインが決まらないために発行が遅れてしまう,
というギリギリの時期に,現在のカバーの元となる写真に出会ったのです。
以前にも書きましたが,天竜川は,今回の作品で重要な役割を果たしています。
太平洋戦争末期に伊那・木窪小学校に疎開していた少年と,
それから約50年後に木窪小で過ごした少年。
現在は老人と青年になった二人が,
共に少年時代を過ごした木窪小での日々を語り合うことが物語の中心ですが,
それぞれの時代で二人の人生に深く関わり,また,二人を深く結びつけることになったのは,
50年の時を隔てても変わらずそこに流れ続けていた天竜川でした。
これぞこの物語の核なのではないか,この本の顔としてふさわしいのではないかという確信9割と,
でも大槻先生に気に入っていただけるだろうかという不安1割を抱えて,
デザイナーさんにお願いをしました。
できあがってきた案を大槻先生にお見せし,よいお返事をいただけたときには,
ほっとしすぎて泣きそうでした。
これまでも,単行本でも学習書でも,「生みの苦しみ」を感じることはたくさんありましたが,
今回,編集の仕事の根底である「かたちにする」ことの難しさを改めて学んだように思います。
作者と読者の間に立ち,作者の思いや作品の魅力をより効果的に読者に伝えられるものをつくること―
当たり前のことではありますが,これからも大事にしていきたいと思います。
『伊那の勘太郎』は,物語で読みやすく,中学生くらいから大人の方まで
幅広い年代の方に楽しんでいただけると思います。
木窪小は,総合学習を中核とした教育が全国的に有名な伊那小学校をモデルにしていますので,
実践事例などとはまた違った角度から,伊那小教育を感じられるのではないかとも思います。
ぜひ多くのみなさんに読んでいただきたい本です。
(14:48)