2012年07月13日

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写真は,平成11年に発行した,
「『信濃子ども詩集』半世紀の児童詩から ちゃんときいて!」という書籍です。
このころ,子どもたちに関わるさまざまな事件が起こり,
「キレる」「むかつく」という言葉が頻繁に使われるようになりました。
そんな中,長年,児童詩を通して子どもたちと向き合ってこられた
長野県作文教育研究協議会の先生方が,
半世紀の間に蓄えられた子どもたちの膨大な詩作品を振り返りながら,
子育てや教育について不安を感じ,自分には何ができるだろうかと考える人たちと
いっしょに解決の糸口を見つけられたらとの思いで編まれたのがこの本です。
表紙を決める際,私は,迷わずいわさきちひろの絵を使いたいと思いました。

“いわさきちひろ”と聞けば,
だれもがあの独特のやわらかなタッチの子どもの絵を思い浮かべるでしょう。
その無垢な姿に,育つ時代や環境によらない子ども本来の姿がみえるような気がして,
どうしてもその絵を使いたいと思いました。

先日,絵本画家いわさきちひろのドキュメンタリー映画の試写会がありました。
“誰もが知っている絵本作家の,誰も知らない波乱の人生”
刺激的な言葉で彩られた55年の人生は,思いもよらないものでした。
自分の意志に反する結婚をせざるをえなかったこと,そしてその無残な結末。
忘れることのできない,被害者としてのまた加害者としての戦火の記憶。
思うようにいかない日々の中でも,画家になりたいという強い思いをもちつづけたこと。
作品の酷評に悩み,挫折を乗り越え,自身の画風を極めていったこと。
童画の力を信じ,読む絵本ではなく,“感じる絵本”を生み出そうと試みたこと。
著作権という意識が希薄な時代,作家の地位と権利を守ろうと奔走したこと,等々。
近しい人たちへのインタビューを交え,さまざまなエピソードと数々の作品が紹介され,
いわさきちひろの人となりと人生が浮き彫りになっていきました。

映画を見て,私がその作品に感じた“子ども本来の姿”とは,
子どもたちが何の苦しみも災いもなく生きていける平和な世界であってほしいという
いわさきちひろの祈るような願いが表現された姿だったのだと思いました。
そしてそれは,子どもたちの詩を通して荒れる子どもを真正面から受け止め,
ともに歩んでいこうとした先生たちの思いにも通じるところがあるのではないかと思いました。

「いわさきちひろ ~27歳の旅立ち~」は,長野相生座・ロキシーにて,
7月28日(土)から8月10日(金)までの上映です。

2000年「日本作文の会賞」受賞
「『信濃子ども詩集』半世紀の児童詩から ちゃんときいて!」
・A5並製 256ページ 1500円  お求めはしんきょうネットまで

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