Ma.K

2020年07月10日

信濃教育会編集,信州教育出版社発行の『理科の教室』が,まもなく発刊の運びとなります。本誌は,長野県の小学校で行われた理科に関する実践事例が紹介されている冊子で,毎年長野県内の小中学校にお送りしています。

今回の第96号は,先生方の理科に関する実践紹介に加え,弊社発行の理科教科書の監修を務めてくださっている,信州大学名誉教授 村松久和先生からも,原稿を寄せていただきました。「どのような理科教員を育てるか」と題して,信州大学教育学部での理科教員養成の取り組みについて紹介されており,卒業生には「理科の伝道師」になることを期待するとしています。


「理科の伝道師」というユニークなことばが印象に残ります。特に小学校段階の理科の学習を考えてみると,高度な専門的知識というよりは,むしろ理科の観察・実験の楽しさを伝え,子どもたちの理科への興味・関心を引き出して裾野を広げていく,ということが先生方に求められるのではないかと思います。

リチウムイオン電池に関する研究でノーベル賞を受賞した旭化成名誉フェローの吉野彰さんは,小学校4年生のときに読んだ本がきっかけで理科を好きになり,研究者となったことが話題となりました。そしてその本を薦めたのは,大学で化学を学んだ担任の先生だったそうです。

その先生はおそらく自分でも化学の実験の楽しさを身をもって体験しており,吉野さんの特性を見抜いてそれに合致する本を紹介したのだと思います。吉野さんはそれによって理科の楽しさに目覚めたわけですから,まさに吉野さんにとって,その先生は最初の「理科の伝道師」であったのだといえます。時に,一人の先生のことばが,児童・生徒の人生を変えるきっかけになることもあります。先生方の役割は,とても大きいのだな,と思いました。


その吉野さんが読んだ本として一躍有名となったのが,マイケル・ファラデーの『ロウソクの科学』です。私もせっかくなのでざっと読んでみましたが,その原著は150年以上前に出版された古典であるため,難解でとっつきにくい部分がそれなりにありました。正直なところ,「これを小学4年のときに読んでしまうあたり,やっぱりノーベル賞受賞者の頭の構造は違うな。」と思ったのが率直な感想ではあります。

それでも,1本のロウソクを題材にしながら,熱による状態変化や上昇気流,ロウソクの芯の毛細管現象や燃焼による化学反応などにつなげていき,私たちにも身近な存在であるロウソクが燃え続ける不思議を掘り下げていくという構成は,さすが古典的名著だなと思わせる内容でした。


理科では,「なぜ」「ふしぎ」という身近な疑問から学習がはじまります。自身の経験や足元の自然とのふれあいを入り口にして,その根底にある科学の本質へと考えを深めていく試みは,長野県の理科の先生方も,日々の授業の中で実践しておられることでしょう。

『理科の教室』は,そうした先生方の足元の実践が紹介されています。4年の「ものの温度と体積」,5年の「もののとけ方」のほか,新しい学習内容である3年の「音のせいしつ」や,6年のプログラミング学習の実践も紹介されています。こうした実践報告を通して,理科に興味をもってくれる長野県の子どもたちが一人でも増えることを願っています。

私たち出版社は,「理科の伝道師」となることはできません。しかし,先生方にお役立ていただける教材や書籍の発行を通して,微力ながらも1本のロウソクのように,長野県の子どもたちの心に「火を灯す」ためのお手伝いができればと思っています。


今年は『理科の教室』に加え,『ふるさとの大地増刊号』も合わせて各学校にお届けします。
お手元に届きましたら,手に取ってお読みください。



(10:59)

2019年08月23日

最近,毎週金曜日に放映されている『凪のお暇(おいとま)』というドラマを見ています。主人公は,「わかるー」が口癖の,常に周囲に合わせて空気を読みまくる28歳OL,大島凪。極端に空気を読みすぎて過呼吸で倒れてしまい,それをきっかけに自分を見つめ直し,すべてを捨てて新しい生活を始める,という物語です。

第1話での主人公の空気の読みっぷりは,かなり過剰でした。それでも,会社で空気を読んで上司や同僚に合わせてしまったり,自分だけご飯に誘われていないのではと不安に感じたりするシーンや,「いいね!」ボタンを押さなければならないSNS特有の窮屈さなどに対しては,主人公の凪のように「わかるー」と同意した視聴者も多かったのではないでしょうか。こうしたモヤモヤな現状に対する,「なんだかなぁ……」という悲哀たっぷりな主人公のつぶやきが,なんとも印象的な第1話でした。

現在は主人公とお隣さん,元カレとその同僚の4人の恋が絡む青春感たっぷりのラブコメドラマとなっていますが,それぞれの回で「空気」を軸に進んでいくストーリーが面白いです。興味がある方はぜひご覧いただければと思います。

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話は変わって,『大辞林』や『新明解国語辞典』でおなじみの三省堂では,毎年「今年の新語」を発表しています。最新の2018年の大賞は「ばえる」(写真がひときわ美しく目立って見えるさま)という順当な結果でしたが,個人的に興味深いと思ったのが,2位と3位にランクインしたことばです。

3位だったのは「わかりみ」。「わかる」とほぼ同じニュアンスをもつ,ネット発の用語です。
これに限らずネット上には,簡単に同意や共感を示せることばがたくさん登場してきました。例えば,「それな」,「あーね」,「たしかし」,「ほんこれ」,「はげどう」など。コミュニケーションを手っ取り早く円滑に進めるためには,同意や共感のことばがたくさん必要だったのかもしれません。

そして2位だったのは「モヤる」。「モヤモヤ」を「~る」という形で動詞化した若者ことばですね。先ほどのドラマの主人公の「なんだかなぁ……」というモヤモヤな心境は,まさに「モヤる」状態だといえます。
この言葉はSNS上でもよく見られます。そもそも,同意や共感を表すネット用語や若者ことばはたくさんあるのに,相手への不同意を角が立たないようにやわらかく表現することばは多くありません。反対の意を表明できず,かといってそのモヤモヤを心に押しとどめておくこともできない,そんな心境から「モヤる」ということばがSNS等で多く使われるようになったのかもしれません。3位の「わかりみ」をおさえ,2位に「モヤる」がランクインするあたりに,空気を読むことに疲れた現代ならではのモヤモヤ感があるような気がします。


私も社会人になってから,いろいろ「モヤる」経験をしてきました。

最近だと,例えば仕事において,自分とは異なる立場の様々な方から,受け入れがたい要求(要はムチャぶり)をされる場面が何度かありました。
ドラマのように受け入れられないことはキッパリと断るとか,急にそっけなく塩対応になるとか,顔面から威圧を与えておくとか,不同意を示す態度は山ほどありますが,さすがにそれは空気をぶち壊すな……と考え,結局何も言わずに「モヤる」ことが何度かありました。

しかし,一見ムチャぶりであっても,後で冷静になって相手の立場で考えてみると,それはそれでしっかりと理解できる要求の理由があることに気づきます。

なぜ「モヤる」のかといえば,相手の考えを理解できないからです。それなりに相手の立場に立って考えて,共感できる部分が見つかれば,モヤモヤは少し軽減されるのではないでしょうか。

先述した三省堂「今年の新語」の2017年大賞に選ばれたことばは,「忖度(そんたく)」でした。今となってはネガティブなことばですが,本来の意味は,「他人の気持ちをおしはかること」です。まさに相手の立場に立って考えるという,日本人らしい気配りを示すことばといえます。

何かと「モヤる」ことが多い時代に必要なのは,この「忖度」かもしれません。

ドラマ『凪のお暇』の主人公は,空気を読むことに疲れ,すべてを捨てて新しい生活を送ることになりましたが,私たちにとってそれは容易ではありません。

空気を読むことからなかなかお暇できない私たちにとっては,仮に意に沿わない結果となろうとも,せめて本来の意味での忖度によって相手の気持ちをおしはかり,「わかりみ」を感じる部分を少しでも増やしていくことが大切なのではないでしょうか。

それこそが,「モヤる」気持ちを軽減させる処世術であり,事態の打開に向けた第一歩へとつながっていくのだと思います。

(17:40)

2019年05月09日

今年も,『理科の教室』の発行時期となりました。『理科の教室』は,長野県の小学校で行われた理科に関する実践事例が紹介されている冊子で,毎年長野県内の小中学校にお送りしています。

今回の第95号は,先生方の理科に関する実践に加え,小学校で初めてメンデルの法則を取り扱った教材,信濃教育会編『高等小学理科筆記帳』に携わった長谷川五作先生に関する記事が,雑誌『信濃教育』1584号から転載されています。

メンデルの法則といえば,中学校や高校の理科の時間に習った,エンドウマメを使って遺伝の法則を発見した実験が有名ですね。ここから,遺伝子に関する研究が大きく発展することになりました。

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元号が令和に変わって以降,さまざまな平成を振り返る企画がテレビ等で取り上げられていましたが,平成は,私たちにとって遺伝子が身近な存在になった時代でもあると思います。

ヒトのDNA配列を解析するヒトゲノム計画は,平成2年から始まり,同15年に完了しました。その解析費用は,3000億円以上かかったと言われているそうです。その後,アメリカの企業が従来手法よりも優れた解析装置である次世代シーケンサーを開発して以降,飛躍的に短時間・低コストでの解析が可能となっています。

解析方法の改善で,平成の終盤には,日本でも1万円程度からの価格で自分の遺伝子を解析してくれるサービスが登場しました。それを使えば,例えば「母方の祖父がハゲているから,自分もハゲる可能性が高いかも?」といった疑問が,遺伝子検査という根拠をもって,はっきりすることになります。

現在の遺伝子解析では,主に発がんリスクの発見やオーダーメイド医療への活用など,医療分野での活用と研究がメインです。しかし令和時代には,AIの発達とともに遺伝子解析もより高度になり,今は想像できないさまざまなことがわかるようになるでしょう。自分でも気付いていなかった新たな才能が明らかになる,なんてこともあるかもしれません。


そうした無限の可能性がある一方で,遺伝子検査結果を広告宣伝や生命保険加入審査に利用する動きがあるなど,また別の問題も引き起こし始めています。

例えば,現在は入学・入社時に,履歴書に加えて健康診断結果の提出を求められることがあります。その延長で,遺伝情報結果の提出も求められ,自分の遺伝的能力の不足を理由に入学・入社を断られる……。そんな未来が来るかもしれません。少しゾッとしますね。


冒頭で紹介した『理科の教室』の記事の最後には,『長谷川五作先生著作選集』の教育論の一部が引用されています。
良い遺伝的能力を享けぬが最後,どうすることも出来ぬように悲観する者もある様であるが,之は誠につまらない考えである。吾々の能力は遺伝で決まって限られて居るというべきだが,併し発達し得るべき可能の範囲が極めて広いことも考えなければならぬなからである。

長谷川先生にとって,遺伝というのは生涯の研究テーマのひとつとするほど,魅力的なものであったと思います。それでも,生まれもった遺伝的能力ではなく,その後の努力による発達の大きな可能性を説いているところに,長谷川先生の教育者としての人柄が表れているように思います。

科学には倫理が必要不可欠です。昨年,遺伝子操作による双子の子どもを世界で初めて誕生させたとして,その研究者が批判された事件もありました。遺伝子研究において科学が「禁じ手」を使うことがないように,私たちも関心をもって見守る必要があると思いました。

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さて,昭和37年に第1号を発行した理科の教室は,平成を経て,ついに,新時代である令和の発行となります。これから,教育に関する様々なことが大きく変わる時代に突入します。きっと,タブレットやプログラミング教材を用いた新しい理科の実践事例も出てくることでしょう。

しかし,脈々と受け継がれてきた信州の理科教育に対する考え方や,「長野県の子どもたちのために」という思いは,これからも変わらないはずです。これからの令和時代も,引き続き信濃教育会の編集のもと『理科の教室』を発行し続け,信州教育の「DNA」を受け継いでいく手助けができればと思います。

『理科の教室』95号は,まもなく各学校にお届けします。ぜひ,手に取ってお読みください。



(11:43)

2018年12月21日

道徳の教科化や,新しい学習指導要領の告示,昨今叫ばれる教員の働き方改革など,学校教育は大きな転換期を迎えています。そのような状況の中で,先生方に読んでいただきたいおすすめの書籍があります。

米澤光人こと米澤修一先生の著書,『今こそ考えたい学力向上のためにできる新しいこと』です。そのタイトルが示すとおり、教育が大きく動こうとしている今こそ考えたい、学力向上のためにできる施策を考える書籍です。

新学習指導要領で言われる「主体的・対話的で深い学び」や、「小学校英語」、「ICT教育」などの新しい教育関係の動向の解説、教員経験をもつ著者による授業・試験の改善例、全国学力・学習状況調査の結果改善、小中高連携、教員の時間的余裕の無さの改善等、学力向上に関する様々なテーマが掲載されています。

小学校・中学校・高校の先生方や、各学校種の管理職の先生方、教育行政に携わる先生方に向けて、それぞれの立場で実践可能な「学力向上のためにできる新しいこと」を実施するためのヒントが満載です。

ただでさえ時間が無いなかで「新しいこと」を始めるのは大きな苦労を伴うと思いますが、まずは子どもたちの学力向上のために今できることは何かと立ち止まって考えることが、そのための第一歩だと思います。

この年末年始に『今こそ考えたい学力向上のためにできる新しいこと』を読んでみてはいかがでしょうか。本書が、「新しいこと」の実践のきっかけとなればうれしいです。

商品ページ(http://www.shinkyo-pub.or.jp/book/2155.html
広告チラシ(http://www.shinkyo-pub.or.jp/catalog/book_catalog/bc0009.pdf

(09:15)

2018年08月10日

中学校向けの長野県高校入試(数学)対策教材として,
今年も『長野県高校入試 数学の問1~4(といし)』が発売されています。

この教材は,長野県高校入試(数学)のための問1対策教材です。

以下のような特長があります。

■全国高校入試問題の問1を収録。全国の多様な問題を解きながら,効果的に長野県高校入試の問1対策ができる。
■応用問題として,全国高校入試問題の中から長野県の問2,問3,問4にそれぞれ近い問題を掲載。

各学校にチラシと教材見本をお配りしておりますので,
お手元に届きましたら,一度中をご覧いただければ幸いです。

詳細は以下よりご確認ください。
http://www.shinkyo-pub.or.jp/text/tc0024.html


なお,弊社は8月13日(月)から8月16日(木)まで夏期休業となります。
暑い日が続きますが,ご体調を崩さぬよう,くれぐれもご自愛ください。

(09:51)