2020年07月22日
ある児童文学の賞で,審査員の方の一人が,「時代を超える作品を求めている」ということをおっしゃっていました。
それはどんな作品だろう,と考えてみました。
時代が変わっても,子どもたちの心を波立たせる作品――。
子どものころに読んだ作品を思い返すと,楽しい話もありますが,国語の教科書で読んだ『スーホの白い馬』や,『ちいちゃんのかげおくり』,『ごんぎつね』など,悲しいお話が強く印象に残っています。
『スーホの白い馬』では,少年スーホと強い絆で結ばれていた白い馬が,理不尽な出来事により命をうばわれます。
『ちいちゃんのかげおくり』では,ちいちゃんが戦争によって命を落とします。
『ごんぎつね』では,ごんが兵十への罪滅ぼしをしている途中で,また悪さをしにきたのだと思い込んだ兵十に鉄砲で撃たれて死んでしまいます。
けれど,子どものころの自分には悲しいばかりだったこれらの物語は,最後には救いもえがかれているのです。
死んだ白い馬の骨などから作られた馬頭琴の美しい音色は,聴く人々の心に安らぎをあたえます。
ちいちゃんが一人でかげおくりをした場所は,やがて公園となり,子どもたちが笑って遊んでいます。
兵十は最後に,ごんが罪滅ぼしをしていたことを悟るのです。
これらのお話は,最近の教科書にも載っています。ひとつの考えですが,時代を超えて読み継がれる物語は,悲しみとともに,そのあとにやってくる小さな希望や救いが描かれている作品なのだと思いました。
コロナ禍や災害など,私たちは日々,自分の意志ではどうにもならない事象にさいなまれて暮らしています。けれど,その先には少しの,もしかしたらたくさんの希望がある。そう信じて,日々の歩みを止めないでいきたいと思います。
(17:30)