2016年11月04日

最近,新しく発売されたiPhone 7を買いました。発売当初から品薄で,私も予約してから3週間くらい待たされました。
今回からおサイフケータイや防水機能がついたり,カメラの画質がよくなったりなど,いろいろな機能が追加され,毎日便利に使っています。

もっとも,iPhoneで新機能として話題になったこうした機能は,日本の携帯電話ではずっと前から当たり前に搭載されていました。例えば,おサイフケータイや防水に対応した携帯電話は,10年以上前から発売されています。

日本の携帯電話は世界的に見てもとても素晴らしいものだったのですが,あまりにも独自に発展しすぎて世界標準からかけ離れ,逆に国際競争力をもてなくなってしまいました。これをガラパゴス諸島で独自に生物が進化を遂げたことになぞらえて,かつての日本の携帯電話は「ガラパゴスケータイ」,略して「ガラケー」と呼ばれるようになったというのは有名な話です。

昔はいろいろな日本のメーカーが携帯電話を作っていたのに,iPhoneが日本に入ってきてから,いつの間にか海外メーカーのスマートフォンばかりが目立つようになってしまいました。
日本のガラケー市場を大きく変えたiPhoneが,一周まわってガラケーの象徴的存在だったおサイフケータイを日本向けに搭載したというのが面白いところです。


日本には,このように独自に発展したガラパゴスなものが多いといわれます。
数学界で言えば,「和算」があげられるのではないでしょうか。

和算というのは,江戸時代に日本で独自に発展した数学で,西洋の数学とも肩を並べる高いレベルのものだったといわれています。
加えて、一部の学者だけではなく、武士や一般庶民などいろいろな人が和算に取り組み、娯楽として親しまれていたということも素晴らしいことです。ベストセラーとなった和算書を読んだり、和算の師匠に弟子入りしたりして力を磨き、問題を自分で作ったり、他の人が作った問題に挑戦したりしていたそうです。
数学が広く趣味として親しまれていたなんて,昔の日本人はすごいなと思いました。

しかし,このように広く日本に広まっていた和算も、明治時代に西洋の数学が導入されてからは,あっという間に廃れてしまいます。
今となっては,和算の存在自体を知らないという方も多いのではないでしょうか。



さて,信教出版では,『信濃の和算』という書籍の販売を,最近再開いたしました。
『信濃の和算』は,信濃の和算史に関する研究を続けてきた赤羽千鶴先生によって記され,昭和53年に発行された,長野県の和算家について書かれた本です。
古い書籍で久しく絶版となっていましたが、このたびオンデマンド版として復刊することになりました。

長野県は東信・南信・中信・北信の4地域に分けられますが,赤羽先生によると,「これらの地域間の結び付きが稀薄で,和算の伝来発達に非常なちがいがある」そうです。

日本の中で独自に発展してきた和算が、さらに長野県内でも地域毎に独自に発展してきたわけです。そこに加えて,ひとくちに和算といってもさまざまな流派が存在しますので,長野県の和算の歴史を紐解こうとすると,とっても複雑で大変です。

『信濃の和算』は、さまざまな流派についても触れながら,東・南・中・北信の地域区分に従って,各地の和算家について明らかにしています。
和算の消滅から時間が経って資料が乏しい中,長野県の和算家を体系的にまとめあげるのは,非常に骨の折れる作業であったことは容易に想像がつきます。

和算の研究書自体が貴重なものですが,さらに長野県の各地における和算の発展について記された本書は,長野県の数学史をたどる上で,とても貴重なものであるといえるのではないでしょうか。

『信濃の和算』は,Amazon等でお買い求めいただけます。
詳しくはこちらからご覧ください。
http://www.shinkyo-pub.or.jp/book/7008.html



西洋数学が導入されて100年以上経ってもなお、和算研究が行われているところに、和算の偉大さを感じます。

『信濃の和算』が、そうした研究の一助になれば幸いです。

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