2008年06月20日

仕事柄,普段からできるだけことばづかいには注意している。

出版社勤め,しかも未来を担う子どもたちが使う学習教材の
製作に携わる仕事ともなれば,当然のことである。
なので,仕事中はもちろん,仕事以外でも正しい日本語や
標準語をつかうよう意識している(つもり)。

しかし,だからといって地元のことばがきらいというわけではない。

やはり,地元の人間同士ならば,長野弁で語り合ったほうが
気持ちが通じる気がするし,最近では逆になめらかな長野弁(?)で
話すご老人などに出会うと妙に感動を覚えたりすることさえある。
やはり,ことばは人間のアイデンティティーを構成する重要な要素のひとつである。

ちなみに,長野人の多くは,長野弁は標準語にきわめて近いと
思い込んでいるそうである。
しかし,あらためてよく考えてみるととてもユニークな,
長野弁特有のことばや言い回しがたくさんあることに気づく。

今日は,その中でも私がとくに気に入っている長野県の北信(ほくしん…長野県北部のこと)の
ことばを紹介しよう。



○「なから」

「半ば」とは違い,「大体OK」とか「ほとんど大丈夫」というような
肯定的な意味で使われる。こういう意味のことを,ひとことで
表現できる標準語のことばがなかなか見当たらず,
冒頭で「標準語をつかうよう…」などと言ったくせに,
ついつかってしまう便利なことば。

■用例1:「先生,原稿は,なからでいいので早めに送ってくださいね(先生,
     原稿はだいたいできている状態でいいので~,)。」

■用例2:(応用)「今日はへえおせし,なからにしてけえらず(今日はもう遅いし,
     大体区切りのいいところまでやって帰りましょう,の意。
     「けえらず」の「ず」は,「~しませんか」という意味でつかわれる)。」


○「~するしない?」

初めて聞いた方は頭の中に「?」マークが浮かぶだろう。
あえて標準語に直すと,「~しませんか?」「~(のようなこと)はありませんか?」
といった問いかけの意味になるだろうか。同意を求めるニュアンスがある。

別の形として「~だしない?」があるが,これは名詞のあとに付いて
「~じゃない?」という意味になる。
若い男子などは「~だしねー?」というふうにもつかう。

■用例1:「日曜日って,つい昼過ぎまで寝ちゃったりするしない?(日曜日って,
     つい昼過ぎまで寝てしまうものですよね?)

■用例2:「あっ,あれは○○君だしない?(あっ,あれは○○君じゃない?)」


※対義語として「~しないしない?」というのもある。

■用例1:「風邪ひいているときに,プールに入ったりしないしない?
     (風邪ひいているときに,プールに入ったりするもんじゃないでしょう?)」



どうです,奥が深いでしょう? 

長野県内の方,普段意識しないでつかっているおもしろい地元ことばが,
このほかにもまだまだたくさんありますよ。
興味があったらぜひ調べてみてはいかがでしょうか。


…おっと,もうこんな時間! 

ブログ書くのも,なからにして仕事に戻らないと怒られちゃうしない?


ということで。


TY

(17:29)