2007年11月12日

 先頃、中央教育審議会教育課程部会は次期学習指導要領改定への「審議のまとめ」を大筋で了承し,いよいよ告示に向けての到達点が見えてきた。この審議のまとめに関する講演会が先日東京で開かれ、行く機会に恵まれた。
 現在の学習指導要領の「ゆとり教育」は、告示された当初から世論の風当たりが非常に強く,学力低下問題と絡めて幾度となくマスコミで取り上げられてきた。種々の学力検査や学習状況等に関する調査の結果から、学力のみならず体力や学習意欲も下がっているとの報道がされ、その類の本も数知れず出版された。
 しかしながら、現在の子供たちの学力低下は「ゆとり教育」だけが原因ではなく、もっと前から存在していた社会構造そのものに深い根があると指摘する方々もいる。例えば、30年ほど前から急速に世の中全体にテレビやゲームが普及したため、子どもたちの家庭学習時間が減ったことや、深夜営業の店が急激に増え、世の中全体が夜型の生活になったため、規則正しい生活習慣が崩れたことなどである。
 もちろん、現行の学習指導要領の中にも、正直言って首を傾げたくなるような部分はある。例えば、全国の都道府県名をすべて知らなくてもいいとか、台形の面積の求め方はやらなくていいとか,円周率は3で計算してだいたいの結果がわかればいいとか…。あまりにも「新・学力観」の言うところの「自ら考え自ら学ぶ」ことばかりに重点を置きすぎ、基本的に知っていないと困るような知識まで削減されてしまったことに対しては、世間の反発を食らったのも当然といえるだろう。
 そのような事を色々と考えながら先日の講演会に出席したわけだが、ご存知のように、新しい学習指導要領の方向としては、全体的に内容や時間数を充実させ、今までの方向から少し軌道修正するようである。講演の中で象徴的だったのは、今回は「バランス」を重視したとおっしゃっていたことである。「生きる力」といって「自ら考え」てばかりいるのではなく、人の言うことにも耳を傾けなければならない。すべての人には「我の世界」と「我々の世界」があり、両方の世界で生きる力を「バランス」良く育てたいという趣旨のようだ。熱い講演で、審議会の方々の、「このままでは日本はダメになる。日本の教育を、日本をよくしたい。」という思いがしっかりと伝わってきた講演であった。有意義であった。
 次代を担う子供たちが心身ともに健全に育って欲しいと願うのは、私たち教育にかかわる者ばかりではないはずである。彼らの成長にとって非常に重要な影響を及ぼす学校教育の拠り所となる学習指導要領が、今後どのように改定されていくのか、日本のすべての大人に関心をもっていてほしいと思う。

(09:44)